藍色に染まる夜

Tirnis side Scenario


ティアニス
「きゃっ!」

 眼前の彼が消えたと思ったら、腕をつかまれて強引に抱きよせられていた。そして信じられない速さでショールをはぎ取られてしまった。

ティアニス
「なにを……っ!」

 言葉につまった。視線を上げたら吐息がかかるくらいの距離に整った顔があったから。あわてて目をそらした。

 冬空の下、ショールをはぎ取られて寒いはずなのに風の冷たさはなぜか感じない。むしろ、顔もつかまれた腕も抱きよせられた腰も妙に火照って、その熱が頭からつま先まで浸透していった。
 頭の芯がボーっとして、耳もとで響く少し速い鼓動の音が、密着している彼のものなのか動揺している自分のものなのかがわからなかった。半ばマヒした思考ではなにも思い浮かばず、浮かんだところでこの力強い腕に囚われたらきっとなす(すべ)もないだろう。
 なにをされても受けいれざるを得ない。
 そんな覚悟で、体を堅くしてギュッと目を閉じた。

 吹く風が、熱を冷ますように頬をなでていく。
 その音に混じって……

Continuation : in the game.